“必ず「5W1H」の問いかけをしており、YES/NOで答えられる質問は絶対にしない。単純な回答の応酬では会話が途切れてしまうからだ。「バイトの子が自分の言葉で語る」のを重視しているようだった。
そして質問する内容は:具体的・客観的な内容よりも、抽象的で主観的なことを語らせようとしていた。あくまでも「語らせる」であって「聞き出す」ではないのがポイントだ。たとえば職務上のミスについて、ミスを犯した原因を分析したり、具体的な対処策を考えたり――そんなことは後回しにしていた(それらは上司であるマネージャーが考えることであって、バイトが考えることではない)。ミスをしたときにどんな気持ちになったか、ミスをしたとき周りのスタッフはどんな気持ちになったと思うか……。そういう「感情」の話を、バイトの子に語らせたのだ。
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相手の外見や口調から内面を予想して、それを抽象的な言葉で質問する。と、質問された側は自分の内面を言い当てられたかのような気持ちになってしまう。そしてごく自然に内面について回答してしまう。そうやって得た情報をヒントに、質問者はさらに内面に踏み込んだことを訊いていく――。これを繰り返すうちに、質問を受ける側は「この人は私のことを理解してくれる!」と全幅の信頼をよせるようになる。そして「このお店のためにがんばろう」という言葉を、すなおに自分の意識へと組み込んでしまうのだ。
一般的なコールド・リーディングの手順は以下の通りだ。(via Wikipedia)
1. 対象者の協力を引き出す(目的を共有して面接を開始!)
2. 対象者に質問する(抽象的・主観的なことを訊いて……)
3. 対象者の反応をさぐる(……バイトの子に自分の言葉で語らせる)
4. さらに情報を引き出す(それを繰り返し、内面をさらけ出させる)
5. 次のステップに移行するここでいう次のステップとは、質問者の意図に沿った行動を対象者にとらせることを意味している。スタバの場合なら、「一緒にがんばろう!」という一言。「このお店のために尽くそう」という意識を内面化させるのが「次のステップ」になる。
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「相手に自分語りをさせる」という方針を貫くだけで、相手のことを理解し、信頼を勝ち得ることに成功している。彼女は「面接」の達人だ。
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最終的に、バイトの子は泣いた。
仕事のミスをした瞬間の焦りや恐怖、あるいは翌日の不安――。そういうものを思い出して、こらえきれなくなったのだろう。声を震わせて、時々すすり上げて。顔を見なくても泣いているのは明らかだった。
「うん、うん。大丈夫だよ」と女性マネージャーはあいづちを打つ。「だから頑張ろう。一緒にがんばっていこう」
「はい……えっく……ありがとうございます……ぐすん」
陥落だ。
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